adore

職場でシステムにトラブルがあり、いつもの席で仕事ができなかった。
そこで行ったのが憧れの「王子」の隣席。まあ、普段の自席の隣でもあり、単純に距離が近くなっただけなのだが面白いように緊張する私。

いつもはすれ違う時と、向こうの体温が上がった時だけわかる香水の範囲で1日過ごすと、なんだか頭が撹乱される。こっちは何もつけていないからダイレクトに嗅ぐ形となり、ちょっと酔った。もう少し控えめにしてくれたらいいのに。
もちろん憧れの人の香水で酔うなんて、幸せなのは否定しない。
顔も頭も良くてきれいな恋人もいて、これ以上何をアピールしたいんだろと思いめぐらすのも一興である。

緊張にも飽きて、せっかく40cmの距離にいるのだから、たくさん話してみた。
いつも話し掛ければ返事はもらえるけど、近い距離の分小さくなった声に似合うくだらない悩み。
おかげで、
「(他人と比べないで)自分を基準と思え」
「ふつうって誰が決めたんだっていうの」
「(体重増やしたくて苦しんで食べたと言ったら)そんな事してもすぐ戻って当たり前、無理するな」
等とばさばさ斬られ、すごく感動する。
「師匠と呼ばせてください、いや心の兄貴でも…」と言って笑われる。

王子はちょっと年上だが、やはり痩せている。私と服を交換しても互いにサイズは問題ないだろう骨格と肉付き。
そんな彼は、同年代を見て「なんであんなに腹が出るんだろう」と思うらしい。
私は「いい年なのに肉がつかなくてすいません」と思ってしまうので、彼を見習って唯我独尊な感じになりたい。
悩んだところでふつうにもなれないし肉もつかないのだから。